独立して3年目。それまで生活を支えてくれていた下請けの仕事を、少しずつ断るようになりました。十分な蓄えがあったわけでも、次の仕事が決まっていたわけでもありません。正直、不安はありました。それでも、これまでと同じ働き方を続けていては、何も変わらないと思ったんです。
下請けの撮影では、私自身を指名していただいているわけではありません。極端に言えば、同じように撮影ができるカメラマンがいれば、私でなくても仕事は成立します。 もちろん、それが悪いわけではありません。独立したばかりの自分を支えてくれたのも、そうした仕事でした。ただ、これから先もカメラマンとして生きていくなら、金額や都合の良さではなく、「相澤だからお願いしたい」と思ってもらえる仕事がしたかった。
自分自身のアイデンティティとは、一体何なのか。ほかのカメラマンとの違いは、どこにあるのだろう。技術を磨くことはもちろん大切です。でも、写真が上手に撮れるというだけでは、選んでもらう理由として十分ではないのかもしれません。 振り返れば、家電量販店で働いていた頃も、ブライダルカメラマンになってからも、私が一番嬉しかったのは、目の前のお客様が喜んでくれた瞬間でした。
何をどう撮るかだけではなく、誰のために、何を届けるのか。自分の仕事の価値は、そこにあるのではないかと思うようになりました。思い切って下請けの仕事を減らし、直接ご依頼いただける仕事にシフトしていきました。 もちろん、仕事を断ったからといって突然依頼が増えたわけではありません。自分の想いや作品を発信し、一人ひとりのお客様と丁寧に向き合う日々。自分の名前で愚直に仕事を重ねていくうちに、少しずつ、直接のご依頼をいただけるようになりました。ようやくカメラマンの収入だけで家族を養えるようになり、家電量販店で働いていた頃と同じくらいの収入も得られるようになりました。 あの極貧生活から、ようやく抜け出せたんです。でも、収入が増えたこと以上に嬉しかったのは、自分の仕事に少しずつ手応えを感じられるようになったことでした。 自分の名前で選んでもらい、自分の仕事で誰かに喜んでもらえる。 振り返れば、ずっと求めていたのは、そういう働き方だったのかもしれません。
生活も少しずつ安定し、一人のカメラマンとして仕事を続けていく自信もついてきました。すると今度は、「この先もずっと、一人でやっていくのだろうか」と考えるようになりました。 自分に一人で出来ることには限りがあります。でも、得意なことが違う人たちと一緒なら、一人ではできなかった仕事にも挑戦できるかもしれない。
そんな折、以前から声をかけていただいていた松本市内の映像制作会社から、再び「一緒にやらないか」とお話をいただきます。 実は、それまでにも二度ほどお誘いをいただいていました。ですが当時の自分にはまだ何も成し遂げたという実感がなく、その都度お断りしていたんです。自分の足で立ち、直接仕事を請けられるようになった今なら、これまでとは違う立場で、新しい挑戦ができるかもしれない。振り返れば、自分の結婚式をきっかけにカメラマンになったときも、独立を決めたときも、思い描いていた通りに進んできたわけではありません。
そして今回もまた、思いがけないご縁に背中を押されるように、一人のカメラマンという働き方から、再び組織の中で新たな挑戦をする道へと進むことになりました。



